後編です。
前編はこちら。
このGPUの裏側(半田バンプ側)のおかしい所、お分かりでしょうか?
上の写真を簡単な図にするとこんな感じです。
真横から見た図ですね。
右側は半田がつらら状になっています。
左側は半田が残っていません。
通常のBGA取り外し
マザーボードに実装された状態のGPU(BGAタイプのLSI)は上の図のように基板と半田ボール(バンプ)で結合しています。
GPUを取り外す時には、ここに基板両面から局所的に加熱し半田バンプを溶かします。
局所的に加熱するのにはリワークシステムという装置を使用します。
加熱すると半田バンプの温度が半田の溶ける温度(融点)を超えて液体状になり、ストレス無くGPUを取り外すことができます。
このとき、加熱する温度が高ければ基板、GPUの端子のそれぞれの半田の残りが溶けたままになり表面張力で丸まって球形になります。(上の図の左4つ)
温度が低めであれば、取り外した後に直ぐ冷えてつらら状になります。(上の図の右2つ)
このように通常であれば、加熱して基板からGPUを取り外した後は基板側にも、GPU側にも半田ボールが残ることになります。
不良基板のGPU取り外し
しかし、この不良基板のGPUを取り外した時の場合、
基板側に半田バンプがそのまま球状に残り、
GPU側からは全く取れてしまっていました。
これがパソコンがGPUの不具合で壊れた理由です。
不良の理由
熱によって半田バンプがわずかに膨張、収縮を繰り返した結果半田ボールとGPUの間にクラック(裂け目)が入りボールがただ「乗っかっている」状態になってしまいます。
半田による端子と端子の結合は、その境界面にわずかな合金を作ることで「溶け合わせて」付いています。
端子同士が乗っているだけの状態ではノイズが出たり、いきなり切れたり、全く付かなかったりするのは当たり前のこと。
この写真の場合はGPUと半田ボールの間にクラックが入って不良になったようですが、基板と半田ボールの間でクラックが入っていたと思われる例もありました。
要するに、GPUに熱が加わりすぎる+加わった熱を取りきれていないということです。
それに加えて、近年のPbフリー半田を使用する流れがあります。
環境を配慮しての事ですし
時代の流れなのでどうしようも無いことではありますが、
Pbフリー半田は「硬いがもろい」ので
ストレスが掛かったときにいきなりピキッと割れてしまうのです。(クラックが入りやすい)
更に言えば、GPUに半田ボールを搭載し加熱したときにGPUの端子とボールのなじみが悪かった可能性もあります。
これが共晶半田であればクラックの可能性が下がります。
共晶半田は少し柔らかく粘り強いのです。
どうすればいいか
ここから解決編です。
問題は2つ。
熱と半田です。
まだパソコンにGPU不良が出ていないのであれば、とにかく熱が加わらないようにしないといけません。
1、PCを通気性のよいところ、熱のこもらないところに置く。
2、排気口を塞いで設置しない。
3、ファンを時々掃除する。
(分解すると保障とかどうなるか分からないのでしないで下さい。プロに任せましょう。見える埃を掃除機で吸うとかになりますかね。)
もし壊れたなら、信頼できる所に依頼しましょう。
メーカーに依頼する場合は基本的にマザーボード交換の値段が掛かるようです。
作業したことが無いなら決して自分で交換したりしないように。
ダメもとでやってみる!という人はyoutubeで色々修理方法が流れていますよね。
完全自己責任で御願いします。
ただ、やってみて壊してしまったという基板は基本的には工房やまだではお受け出来ません。
弊社では
①、基板からGPUを取り外す。
②、取り外したGPUを共晶半田でリボールする。
③、基板にGPUを取り付ける。
という作業をしております。
交換の際は共晶半田に変えて取り付けする方が再発の可能性は低くなります。
注意事項
弊社では100%修理できるわけではありません。
基板からGPUを取り外す際に基板を痛めてしまう等で修理出来ない場合もございます。
また、基板のその他の部分やGPUの中身に問題がある場合、
それを調べることも修理することも出来ません。
工房やまだはGPUの交換のプロですが、PCの故障の解析は行っておりません。
その他の修理のご相談は工房やまだとお付き合いをさせて頂いているパソコン修理業者さまが
おりますのでご紹介をさせて頂きます。
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