GPU半田クラックの原因

GPUとは

 

 まずGPU(グラフィックチップ)の構造の説明から。

 パソコンのGPUはBGA部品です。

 

 多くのCPUがソケットに挿入するタイプのPGAというチップですが、

 GPUは基板に直接半田付けされているBGAというタイプのチップです。

 

GPUはBGAチップ

 

 

 GPUには、基板と同じ素材で出来ている基材に、

 「ダイ」という半導体チップが載っています。

 

 このダイが画像処理をしている部分です。

 

 その処理を半田ボールを通じて基板とやりとりしています。

 

 

GPU写真

GPU半田クラックのメカニズム

 

 このGPUの半田が割れてしまうのには原因があります。

 

 直接の原因は動作中のGPUの加熱によるものです。

 

①GPUは起動をするとダイから発生する熱で温まっていきます。

 重たい処理をするとさらに発熱します。

 

GPUが動作をするとダイが加熱する。

 

②ダイの熱がGPU全体から半田ボール、基板と伝わっていきます。

 

GPUが動作すると基板にも熱が伝わる。

 

③熱による膨張率はその材質によって異なる為、それぞれ熱変形して

 部品の接合部にストレスがかかります。

 

熱膨張による半田ボール接合部へのストレス

 

④PCの起動や様々な処理を繰り返すことで、半田ボール接合部のストレスが蓄積されて

 半田に亀裂が入ります。

 

半田ボール結合部のクラック

 

 これがGPUの半田ボールにクラックが入るメカニズムです。

 

 さらに様々な条件が加わり、

 GPU半田クラックの発生しやすい機種、しにくい機種の違いが生まれてきます。

 

 

半田がクラックを引き起こしやすい素材である

 

 パソコンに使われている半田は「Pbフリー半田」という比較的新しい種類の半田です。

 

 10年程前から使用が始まりました。

 

 この半田は環境に優しいため、使用する事に決まったのですが

 それまで使われてきた半田に比べてデメリットが数多くあります。

 

 そのデメリットの一つに、固いが脆いという点が挙げられます。

 

 その特徴がGPU半田クラックでは大きな問題になってきます。

 

 固くて脆い性質がある為ストレスを吸収できずクラックが入りやすいのです。

 

 半田自体をもっと柔らかく粘り強い共晶半田に変えてしまえば

 半田クラックは起きにくくなります。

 

 

GPUの排熱処理不足

 

 GPUを使用しているとき、使用していないときの温度差が少なければ

 半田ボールへのストレスは軽減されてきますので排熱処理が非常に重要です。

 

 以下の様な問題があれば半田クラックのリスクは高くなります。

 

①GPUを冷やすファンが埃で詰まってヒートシンクを冷却できていない。

 

②GPUとヒートシンクを密着させているグリスが少ない、劣化していて

 GPUの熱がヒートシンクに逃げていかない。

 

 この二つはユーザーでもどうにか対処できる問題です。

 特に①はこまめに掃除機で排気口を吸ったりすればいくらか軽減するのではないでしょうか。

 

 

③ファンの機能が弱い、もしくは付いてない。

 

 これはデスクトップの場合ですね。

 ノートは排熱に限界まで気を使っているでしょうからどうしようもない場合が多いです。

 

④ヒートシンクがGPUから浮いている。

 

 これは設計の問題ですね。場合によっては対処も可能かも知れません。

 

 

GPUが熱くなりやすい

 

 ヒートシンクやファンが上手く機能していてもGPUそのものが熱くなり安ければ限界があります。

 

①GPU自体が発熱の多いものが使用されている。

 

②GPUの周辺にCPU等の別の発熱するチップがありヒートシンクの排熱処理能力を超えてしまう。

 

 これらの2つは設計上の問題なのでユーザーがどうすることも出来ません。

 また、ゲームや動画編集等のGPUに負担が掛かる処理をさせると不良の原因となります。

 半田クラックの事例の多い機種は出来るだけ負担を掛けないように運用する方が良いですね。

 

 

基板の構造が弱い。

 

 構造的にクラックが入りやすいという種類の基板もあります。

 

①基板が薄い

 

 基板が薄いとどうしても基板のゆがみが大きくなりがちです。

 

 基板はパソコンのケースにネジ止めされて固定されていますが、そのネジ止めで

 わずかに基板が反った状態で固定されてしまうとストレスが掛かり続けることになります。

 また、パソコンの落下等の衝撃にも弱くなってしまいます。

 

 そもそもパソコンの基板低価格で作られるため、他の基板よりも歪み安い傾向にあります。  

 

基板が薄いと半田クラックが入りやすい

②基板のパットが小さい

 

 GPUの半田ボールと接続する基板のパットが特に小さい基板があります。

 

 基板のパットが小さいと接合部の面積が小さいことになるので、

 小さなストレスでもクラックが入りやすいようです。

 

基板のパットが小さいとクラックが入りやすい

③コーナーボンドが無い

 

 本来ノートパソコンは携帯する為に作られているので

 多少の衝撃に耐えられるようでなくてはいけません。

 

 その為GPUやその他チップに

 コーナーボンドやアンダーフィルと呼ばれるボンド材が付けられている事が多いです。

 

 それらのボンド材が付いていると、ストレスの掛かりやすいチップの四隅を

 基板にしっかり固定するため落下や基板の歪み等の様々な物理的ストレスに強くなります。

 

 しかし、コーナーボンドの付いていないノートPCもあり、半田割れの原因の一つになっています。

 

コーナーボンドが付いていると半田クラックが入りにくい

 

 

以上のように様々な要因が絡み合い半田クラックの原因となっています。

 

工房やまだでは全国のパソコン修理業者さんや個人ユーザーさんから

GPU半田クラックの修理依頼を承っております。